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日本泳法とは?

 我々水泳部では、普通のクロールや平泳ぎといった競泳とは別に、「日本泳法」を練習しています。ここでは、それについて詳しく解説します。


日本泳法について

☆日本泳法とは
日本古来から伝わる伝統的な泳ぎです。「古式泳法」と呼ばれることもあります。
実用的な泳ぎから、人に見せる泳ぎまで多種多様です。
近年「生涯スポーツ」として見直され、泳ぐ人が増えてきています。
人の体力に応じて泳げる点が受け入れられているようです。

☆日本泳法の流派

流派 発祥地
神統流 鹿児島
小堀流踏水術 熊本(立游を得意としており、なかでも殿様に見せる『御前游』は有名です)
山内流 臼杵(大分県)(武具、旗などを持つ携帯泳法は山内流独特です)
神伝流 伊予大洲・松山(もとは水軍の兵法であり、文禄の役出陣の際に秀吉の命により作られました)
水任流 高松(讃岐高松藩の藩士が練習しました)
岩倉流 和歌山(刀を持つ『太刀泳』、立泳しながら瓜の皮を剥く『瓜剥』などを特技としています)
能島流 和歌山(水軍〔海賊〕の兵士に必要な武術として研究され発達しました)
小池流 和歌山(太田派と違い、蛙足平泳ぎを基本としています)
観海流 伊勢・津
向井流 江戸(江戸幕府の御舟手頭向井家に相伝されてきた流儀です)
水府流 水戸(水戸黄門が護身水術として庶民に普及させました)
水府流太田派 水戸

☆水府流太田派
・開成水泳部は水府流太田派です
・流祖は水府流を修得した水戸藩士の太田捨蔵です
・太田派は太田捨蔵が各流派の長所短所を研究し、水府流をもとに太田捨蔵の独創を加えてつくられた流派です
・四代目の本田存が師範学校で太田派を指導したことから、全国の学校を通じて広く伝わり、日本泳法の中では泳いでいる人が最も多い流派です
・太田派はいかなる状況下に対応できるような実践的な泳ぎです



日本泳法の泳ぎ

 水府流大田派の泳ぎを中心に説明していきます。なお、文化祭パンフレットにも掲載されています。

◆泳ぎの基本姿勢

○あおり
水府流太田派をはじめ多くの日本泳法の流派では、足を前後に開いて閉じる動作で水を後ろに蹴って進みます。この動作をあおりといいます。
あおりをしたときに前に来る足を先足、後ろに来る足を受足といいます。

○手
横体で下になる手を先手、上になる手を受手といいます。

◆横体

横に寝た姿勢で泳ぎます。首を横にひねって顔を水面に出します。

○一重伸本体
 ・横になってあおりをするのと同時に受手をかき、次に先手を掻いてそのまま伸びます
 ・一回あおるので一重伸といいます
 ・最も基本的な泳ぎです

○一重伸略体
 ・一重伸し本体の先手を掻かないバージョンです
 ・最も簡単な泳ぎです

○片抜手一重伸
 ・一回のあおりにつき両手を一回ずつ交互に掻きます
 ・受手を水上に出します
 ・連続してテンポよく泳ぎます
 ・もっともスピードの出る泳ぎです
 (・片方の手が水上に抜けるから片抜手といいます)

○二重伸本体
 ・二回のあおりを連続させて泳ぎます
 ・二回あおるので二重伸といいます
 ・手は両手とも一回ずつ掻きます

○二重伸略体
 ・二重伸本体の動作に受手を一掻き加えた泳ぎです
 (・略体なのに本体よりも動作が多くなります)

○片抜手二重伸
 ・片抜手一重伸に二重伸の要素を加えた泳ぎです
 (複雑な泳ぎなので、動作はビデオをご覧ください)
 ・片抜手一重伸と違い、水面に伸びます
 ・一度の動作で多く進めます

○片抜手二重伸本体
 ・片抜手二重伸に受手の動きとあおりを一回ずつプラスした泳ぎです
 ・三回あおり、一回の動作でさらに多く進めます

○継手伸
 ・あおりを何度も連続させて泳ぎます
 ・一回のあおりにつき手を片方ずつ掻きます
 ・勢いが途切れないように爆発的に泳ぎます

○抜手伸
 ・継手伸の受け手が(片抜手のように)水面から出る泳ぎです
 (抵抗が継手伸に比べて小さくなります)

○諸手伸
 ・継手伸の手を一回のあおりで両手同時に各バージョンです
 (継手伸より推進力が大きくなります)

☆継手伸・抜手伸・諸手伸は激しい流れを横切ったりさかのぼったりするのに使います

◆平体

うつ伏せになって泳ぎます。あおりをするときには腰をひねります。

○両輪伸
 ・浮きを取るため水面をなぞるように手を動かします
 ・腰をひねってあおります
 ・合宿の大遠泳はこれで泳ぎます
 ・平体の基本です
 (・太田派における平泳ぎのような存在です)

○平伸
 ・手の動きは一重伸本体のようにあおるのと同時に受け手を掻き、次に先手を掻いてそのまま伸びます
 ・両輪伸のように腰をひねってあおります
 ・水面に対して平らになれるので、波に乗ったり、海草が多いところや海底に岩のあるところを泳ぐのに適しています

○早抜手
 ・片方の手を小さく横に水から抜くことで浮きを取り、片方の手を大きく掻いて進む泳ぎです。
 ・両輪伸と同じように腰をひねってあおります
 ・平体の中では最も早く泳げます

○大抜手
 ・両手とも大きく掻いて進みます
 ・あおりには左右どちらが先足になるかの向きがありますが、大抜手では両方の向きを交互にあおります
 (両あおりといいます)
 ・大きな波を乗り切るのに使います

○小抜手(小継足小抜手)
 ・両手とも小さく掻きます
 ・大抜手と同じく両方の向きを交互にあおります
 ・爆発的に進みます

○バタ足小抜手
 ・小抜手の足をバタ足にしたバージョンです
 ・誰かがおぼれているときなど、急を要するときに目標物にめがけて爆泳します

◆立泳

○踏足
 その名のとおり水を体の増したに踏んで浮きます。後述の巻足より簡単です。

○巻足
 ひざを軸にして円を描くように動かすことで浮きます。

 ☆水球やシンクロナイズドスイミングの選手は立泳を使います(踏足と巻足を組み合わせた踏み巻き足です)

◆飛び込み

 日本泳法には飛び込みもあります

○逆飛
 跳んだあと体をそらし、そのまま入水することで早く水から出られます。水にもぐっている時間が短いので、誰かがおぼれているところへ飛び込むときに使うようです。

○式飛
 ほぼ真上に跳んだあと手で足を抱え込み、体育座りの姿勢で入水します。何かの式のときに使います。合宿で使う船を廃棄する「廃船式」で式飛がされました。

○槍飛
 飛ぶ姿勢のまま倒れこみ、体と水面が大体平行になったときに飛び込み板を蹴って、気をつけの姿勢のまま入水します。舟の窓など狭いところから飛び込むときに使うらしいです。

○順下
 あおりをするときのように足を前後に開き、手を前に出し、入水するとき強くあおりをして、手で水面をたたきます。こうすることで、顔を水につけないようにします。紙や衣類を持って飛び込むときや、早く泳いで目的地に向かう必要があるときに使います。

◆その他

○諸手伸
 ・両手を掻き、縦にあおることで水上に勢いよく飛び跳ねる泳ぎです
 ・海で泳いでる状態で大きな波を乗り切ったり、舟のへりにつかまったり、体についた海草を払いのけるのに使います

○小手搦
 ・足は縦にあおり、上半身を浮かせて波が立たないように泳ぎます
 ・両手を背中で縛られた状態で泳ぎます

○手足搦
 ・足で水を踏み、上半身を浮かせて波が立たないように泳ぎます
 ・両手両足を縛られた状態で泳ぎます

☆この泳ぎができれば、城で捕虜になっても堀を泳いで脱出でき、海に落とされても生還できます。
れっきとした武術です。


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